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WINERIES

100%自社栽培で描く「札幌のテロワール」〜さっぽろワイン訪問記〜

Miyuki Isobe5 分
目次
  1. 01海と山から吹く風が特徴!札幌・石狩だからこその畑
  2. 02約20品種から、その土地に合うブドウを探す
  3. 03小さなタンクを使い分け、ブドウの個性をそのままワインへ
  4. 04同じリースリングが見せる、石狩と札幌の違い

北海道のワイン産地というと、最近は余市や空知を思い浮かべる方が多いかもしれません。

しかし札幌市と、そのすぐ北に位置する石狩市にも、ヨーロッパ系品種を中心に約10〜11haもの畑を持ち、100%自社栽培のブドウからワインを造るワイナリーがあることをご存知でしょうか。

「さっぽろワイン」がスタートしたのは2020年。現在は石狩市の八幡、樽川、札幌市の手稲前田、新琴似の4カ所に圃場を持ちます。なかでもメインとなる石狩市八幡の圃場は約8ha。栽培する品種は20種類近くに及び、ピノ・ノワール、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、ケルナー、リースリングなど、多彩なブドウを育てています。

畑、醸造所、ショップ、ワイン。本コラムにて一通りご案内していきましょう!

CHAPTER 01

海と山から吹く風が特徴!札幌・石狩だからこその畑

まずは、栽培と営業を担当する谷内佑介氏に畑を案内いただきました。
実際に畑に立って、まず印象に残ったのが「風」です。

取材中にも絶えず強い風が吹き抜けていました。周辺には風力発電の風車も見られるほどで、この風がブドウ栽培にとって大きな意味を持つといいます。

風が畑を通り抜けることで湿度が下がり、病害のリスクを抑えることにもつながります。北海道らしい冷涼な気候と風は、とりわけ白ブドウにとって、この土地の重要な特徴の一つです。海により近い石狩市樽川の圃場でも同様に風が吹き、平坦な土地でありながらブドウを栽培しやすい環境になっているそうです。

もう一つ注目したいのが砂質の土壌と水はけの良さです。

石狩の圃場は海にも近く、砂丘地の特徴を持つ場所があります。また、一般には暗渠などの排水対策を必要とする場所が多いなか、この周辺はもともと水はけに恵まれている場所なのです。

さらにユニークなのが、かつてキノコ栽培を行っていた背景を生かし、栽培後に出る菌床を畑へ投入していること。ブドウだけではなく、アスパラガスや、ブルーベリーに似た果実のアロニアなども栽培されています。

ブドウは基本的に垣根仕立て。北海道では冬の積雪や寒さへの対応も欠かせず、冬季には枝を下ろして雪の中に入れる作業も行います。一方で、平地だからこそ樹高をある程度確保することで日当たりや風通しにもつながるなど、この場所の条件に合わせた栽培が行われています。

CHAPTER 02

約20品種から、その土地に合うブドウを探す

さっぽろワインの畑では、約20品種という多くのブドウが栽培されています。

ワイナリーのスタートは2020年ですが、ブドウ栽培はそれ以前から始まっており、なかでもヤマ・ソーヴィニヨンは栽培開始から約10年。現在はケルナーをはじめ、ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、ピノ・ノワールなど幅広い品種を育てています。

その中で、今後のさっぽろワインを知るうえで面白い存在がリースリングです。

晩熟型のリースリングは北海道では成熟を待つことが難しく、単一品種のワインとして造る生産者はまだ多くありません。しかし近年の気候変化などもあり、その可能性が見え始めているとのこと。さっぽろワインでは、札幌と石狩、それぞれで収穫したリースリングを分けてワインにすることで、産地による個性の違いまで表現しようとしています。

CHAPTER 03

小さなタンクを使い分け、ブドウの個性をそのままワインへ

続いて醸造所へ。

醸造責任者の南康太氏が案内してくれたのは、ステンレスタンクと樹脂製タンクを中心としたコンパクトな醸造設備です。

特徴的なのは、小型のタンクがずらりと並んでいること。多品種・多銘柄を扱うため、それぞれの量に合わせてタンクを選び、デッドスペースをできるだけ少なくする工夫を凝らしています。醸造から瓶詰めまでを南氏がほぼ一人で担い、限られた設備を使い分けながら多彩なワインを造っています。

ワイン造りで大切にしているのは、複雑さを意図的につくり込むことよりも、ブドウの果実味や品種の個性をきれいに表現すること

そのため、酵母についても「野生酵母でなければならない」といった一つの方法に限定してはいません。一部では野生酵母を使いながら、基本的にはそれぞれの品種特性を引き出すことを考えて培養酵母を選択しています。熟成はステンレスを中心に、ピノ・ノワールや一部のシャルドネなどでは樽も使用します。

酸化防止剤についても同様です。使わないこと自体を目的とするのではなく、販売までの期間やワインの状態を考えながら量を調整する。南氏が目指すのは、飲み手がボトルを開けたときに、そのワインの魅力がきちんと感じられる状態です。

CHAPTER 04

同じリースリングが見せる、石狩と札幌の違い

その土地と造りの違いを最も分かりやすく体験できたのが、石狩産と札幌産、2つのリースリングの飲み比べでした。

石狩産は、グリーンを帯びた淡いレモンイエロー。柑橘や青リンゴを思わせる爽やかな香りに、キリッとしたフレッシュな酸が続きます。海に近く、砂質土壌の畑で育つブドウらしく、谷内氏もミネラル感を一つの特徴として挙げています。

一方の札幌産は、果実の香りにもう少しボリュームがあり、桃やアンズを思わせるニュアンス。酸も石狩産に比べると丸みがあり、ふくよかな印象です。

醸造にも違いがあります。石狩産には培養酵母を使用する一方、札幌産は野生酵母と培養酵母で別々に発酵させたワインを最後にブレンド。それが複雑さやふくよかさにもつながっているといいます。札幌の畑では手稲山から吹く強い風や日照も、ブドウの成熟に影響を与えているそうです。

同じ品種、同じヴィンテージでも、育つ場所と造りによってこれだけ表情が変わる。北海道のリースリングの可能性を考えるうえでも、興味深い2本の比較でした。

また、全房を用いて発酵させたピノ・ノワールでは、赤系ベリーの香り、土や森を思わせる香りと柔らかな果実味、そして飲み込んだ後に残る旨味が印象的。南氏は慎重に試行錯誤を重ねながら、北海道のピノ・ノワールらしい表現を探しています。

札幌、そして隣の石狩。都市部にありながら、海、山、風、土の異なる自然条件を持つ畑があり、そこで育ったブドウから多彩なワインが生まれています。

約10〜11haの自社畑と約20もの品種を持ち、さらに畑ごとの違いをワインとして表現し始めているさっぽろワイン。

北海道ワインの産地が広がりを見せる今、これからどの品種がこの土地の個性をより鮮明に映し出していくのか。今後が楽しみなワイナリーの一つでしょう。

さっぽろワイン

https://www.sapporo-wine.com/home

この記事を書いた人

Miyuki Isobe

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