2002年の夏。
「さて、どうしたものか・・・」青空を侵食するように迫る斜面を見上げる。
荒れた樹木が生い茂り、下草の中には朽ちた木片や針金さえのぞく。ここはかつて、豊かな葡萄畑だった。
朽ちた畑を放ってはおけない。会社を定年退職した高野は、その思いだけで荒地に踏み入った。最初は高野と、高野を見かねた会社の先輩、田中の2人だけ。農業機械さえ受け付けない傾斜地で、鎌を手に1年半、ようやく整地を終える。しかし、初めての葡萄栽培は害虫にやられて失敗。台風のため、開墾した斜面を流されたこともある。「葡萄畑を蘇らせたい」・・・無謀なチャレンジから5年。約6,000平方メートルの畑に、やっと美しい葡萄が実った。
畑に広がるのはヨーロッパなどでよく見られる垣根栽培の葡萄たち。
ここ鳥居平は日当たりも水はけも良好。さらに山頂近くのこの畑は、昼夜の寒暖差もある。葡萄やワインの産地として有名な勝沼の中でも屈指の好条件だ。山梨の、勝沼の、鳥居平の、荒れた畑を甦らせた。そこで手塩にかけて葡萄をつくった。美味しいワインができないはずがない。
「どこにもないワインをつくってやる」
地元の畑仲間から甲州葡萄を買い入れ、甲州葡萄100%の白ワインをつくった。
収穫する葡萄の一粒を、醸造されたワインの一滴に、大切に、大切に。
そうして東夢ワイナリーが誕生したのである。




