横濱ワイナリー(神奈川)


 2018年2月27日取材 

 町田佳子(代表)  

-ワイナリーをはじめる前に環境保全団体(WWF)にいらしたとのことですが、具体的に何をされていたんですか? 


町田 いろいろやったんですが一番長かったのは食糧問題のPR、広報の仕事ですね。市民活動家と政府、企業の間を取り持つ活動です。私がやっていたのは特に食料問題の中でも水産。最近、うなぎやマグロの漁獲量の問題が言われていますが、それに私も関わっていました。企業とか政治家とか国際社会で法案を作ったりとか、そのようなネゴシエーションをずっとやっていました。水産資源枯渇の多くの原因は消費者が知らないことなので、何をしたらいいのかといった普及啓発を手がけていました。 

 -WWFに入られる前は普通のお勤めをされていたんですか? 

町田 金融機関にいました。 

 -それでは金融からWWFもまた違う世界だったんですね。 

町田 そうですね。もともと金融が私、合わなかったというか、自然が好きで動物が好きでというのがあってWWFの活動にはずっと関心がありました。ちょうどバブルが弾けて、しばらくWWFのボランティアなどを続けていました。  

-WWFは何年くらいいらっしゃたんですか? 

町田 アルバイトを含めるとトータルで20年くらいになりますね。  

-人生の中で一番大きな存在を占めるわけですね。 

町田 そうですね。気づいたらそうなっていました。 


-さあ、ここからワインの世界に行かれたわけです。きっかけを教えてください。 

町田 ワインに行く前に日本酒をやろうと思っていたんです。日本酒のいろいろな資格などを取ってある程度のレベルまでいってたんですが、気がつくと日本酒は既にいろいろな方が盛り上げていっている。おこがましい話ですが私が出なくてもいいかなと。もともとよく考えたら日本酒より私、ワインの方が好きで。ナパのワインが日本に入り始めた時に結構、私は飲んでいました。当時から美味しいと思ったのはナパのワインでした。 そういうのがある中でWWFの最後の一年間、私、りんごを売り歩いたんです。りんごとみかんを売り歩きました。傷のついたりんごとか、見た目の悪いものとか、売り物にならないとされた果実を農家さんから譲り受けてそれを売ることはできないので寄付を募るという形でいろいろなマルシェに出店していました。そもそも、見た目が悪いと買わない日本人とか、スーパーには綺麗なものしか置いていないとか言うこと自体が食料問題の根幹にあるわけです。皆さんに、見てくれの悪いりんごとか、みかんとかと言って避けて食べないというのはやめてくださいと伝えていました。そこが私と「果実」との出会いですね。 長野県の生産者のところに行くようになり、果実の現状を見るようになりました。やはり抱える問題が大きい。高齢化の問題とか台風とか。その時にりんごでシードルを造っていたんです。面白いなというのが頭の中にあって、それで、自分で何をやるかと考えた時に、今までやってきたことを人に伝えたいし、消費者に知ってほしい生産の現場があるなと。そしてふっと思ったのが横浜にはビールはあるけれどワインはないなと思ったことで全てつながりました。なんで横浜でワインを造らないのだろうと思いました。それで調べはじめていってどんどんワインのほうに傾いていきました。横浜に骨を埋めようと考えていたので横浜に貢献したいと思いました。 


-そこで「ワイナリーを造ろう!」と思われたのがすごいと思います。 

町田 ワイナリーを造ろう!とまず思い立ったのではなく、ワイナリーは造れないものなのだろうかという疑問を解決していこうとする中で行き着いたというところがあります。記憶に残っているのは関東農政局のセミナーがあって、それに参加したんです。そもそもワイナリーってどうやるんだろうって。そのセミナーはワイナリーがあるところへの移住促進のセミナーで、私の本来知りたいこととはズレていたんですが最終的に言われたのは「1億円もってこないとワイナリーはできません」というのが答えでした。1億はさすがにないなと。本当にできないのかと。そこから疑問が沸いて調べていくと、どうもそんなことはないと。葡萄は買ってくればいい。設備は小さくやればできる。そこから業者さんと接触をはじめていくらかかるか計算をはじめてなんとなく、これできるんじゃないかと思い初めて、たまたまなんですけど銀行さんとか補助金が取れるとかがあって、それでいけるなとそこから加速度的に進みました。 

 -それが何年くらい前? 

町田 ちょうど1年前(2016年のはじめ頃)です。 

-1年ですか!?すごい行動力ですね。 


町田 動きましたね。こうと決めて腹くくってやりました。 

-とはいえ、醸造に関しては全くご経験がなかったと思います。金沢ハイディワイナリーの高作さんが協力されていますね。 

町田 はい。彼と出会ったのはちょうど思いつきはじめた2年前の時です。金沢マラソンに参加した際、帰りにワイナリーに寄ってみようと思ったんです。そこで丁寧に案内をしていただいて代表の高作さんが横浜出身だということが分かりました。偶然だったんですが運命を感じましたね。そこで高作さんに醸造責任者として立ってもらおうということになりました。 

 -実際に醸造の修行なようなことはされたのですか?

 町田 はい。ハイディワイナリーさんや、東京ワイナリーさんに行って学びました。  


-あとは原料の葡萄です。こちらはどのように? 

町田 間にひとり、葡萄の研究者の先生に入っていただいています。全国の葡萄の生産者さんが集まる会を紹介いただいて、その会から生産者さんとの縁が生まれました。 

-「横濱ワイナリー」のような都市型ワイナリーのメリットとデメリットはなんですか?  

町田 当然、葡萄園を持っていないというのが大きなデメリットです。葡萄を買い付けなければいけないので良い葡萄が買えるかどうか不安なところがある。そこが非常につらいですね。メリットとしては、何と言っても消費地に近い。ここにいるだけで消費者が歩いている。それらをうまく招き入れれないだけ。あとは人手です。フェイスブックを起ち上げて、そこで作業をお手伝いしてくれる方を募集するとすぐに集まっていただける。人手の面ではとても助かっています。  

-将来的には(横浜の葡萄を使った)本当の横浜ワインを考えられています? 

町田 実際に今、市内で葡萄を植えている方が何人かいらっしゃいます。まだ本数が少ないので時間がかかりそうですがいつかは造りたいと考えています。 

 -自社畑も考えてますか? 

町田 はい。 -自社畑を持つ場合も横浜ですか? 町田 そうですね。横浜には持ちたいですね。ただ、横浜の葡萄畑は買うことはできないでしょうから、その場合は借りて作るというのが現実的だと考えています。 


 -横浜以外では? 

町田 管理園地のような形でお話をいただいているところがあります。「横濱ワイナリー」限定の葡萄畑という形ですね。確定ではないですがいろいろな形を考えていきたいです。 


 -将来の展望は? 

町田 小ロットでいろいろなものを造ってみたいなという希望があります。造り方をいろいろと変えて。小さなタンクを増設していきたい。他の果実のニーズもすごくあるので、イチゴやブルーベリーなどのフルーツワインも手がけてみたいです。次のシーズン(2018年)は何かしらやってみたいですね。 

 -醸造家として、こだわっているところが何か教えてください。 

町田 葡萄はそれぞれ個性があるので扱うのは難しいです。同じやり方でやっても発酵しなかったり、しすぎたり・・・。いろんな温度の条件、酵母の種類によって、すごく変わるので大変です。こだわっているところというのは、できるだけ“葡萄の味”を大切にしていきたいと思っていて、できれば私は補糖という手段は取りたくないですね。アルコール度数がどうしても低くなってしまうんですけど、グラニュー糖を加えてというのはあんまりしたくない。添加物も入れたくない。酸化防止剤もできるだけ入れなくても済むやり方で醸造していきたいなと思っています。 

-現状は補糖はされていない? 最初に醸した、みなとみらい、馬車道、大さん橋、元町の4種は補糖していません。 


-火入れは? 

町田 火入れもしていません。濾過もしていないので生ワインです。熟成させて飲むワインではなく、フレッシュさを楽しんでいただくワインです。そもそも手搾りなので物理的に強く搾れません。やんわりと搾っています。 

-樽は? 

町田 樽はやってみたいと思っています。ただ樽香はつけたくないんです。発酵のひとつの種類としてステンレスでなく樽を使ってみたいというのはあります。パリの都市型ワイナリーを訪ねた時にいろんな面白い造り方をしていて楽しそうでした。原産地呼称とか気にせずに自由にできるのが特徴だと自負していて、私も自由に造るところに魅力を感じています。  




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